【被害者】60代女性/専業主婦 【症状】四肢麻痺 【等級】別表1・1級1号
獲得金額 1億2600万円(近親者慰謝料600万円を含む。)
信号待ち停車中の追突事故により脊髄損傷等の傷害を負い,約1年2月にわたる入院治療を経て,四肢麻痺等の後遺障害を残して症状固定となった事案。 入院中の親族の付添費等のほか,後遺障害に伴う将来費用(介護費用,福祉用具費用等)等について損害の範囲が争点となり,訴訟遂行を経て和解による解決となった。
入院付添費について,入院中の医療機関が完全看護態勢をとっていても,医師の指示がある場合や,受傷の程度等により付添の必要が認められる場合には,入院付添費が損害として認められ,またこの場合,通常対価の授受がない親族による付添であっても,損害賠償請求が可能です。 本件において,事故当初被害者には意識障害がみられ,一時は心肺停止状態に陥っていたほか,複数回の手術を要し,術後に耐性菌の感染症に罹患したとの経過がありました。また,身体の自由を失うという重篤な症状のため,心身両面において親族のサポートが不可欠であり,約1年2月の全入院期間中にわたり,常に1〜3名の親族が付添いを行いました。 こうした事情を踏まえて親族の入院付添費及びその交通費の請求を行い,和解では救命病棟での入院期間約2か月間については全日2名分,その後の一般病棟での入院期間約4か月間については全日1名分,その後の他病院への転院後の約8月間については週2日の頻度で1名分についての付添費(合計約200万円)が認められました。また,付添交通費については毎日の付添を前提とする請求額全額(約150万円)が認められました。 加えて,上述の重篤な症状があったことから,個室料についても請求し,救命病棟から転床後の約4月間についての費用約520万円の賠償が認められました。
本件では被害者に常時の介護を要する後遺障害が残されたことから,症状固定後に負担を要する種々の将来費用が問題となり,特に損害額が高額となる将来介護費が大きな争点となりました。介護費について,一般に職業付添人による介護費用は近親者付添人による介護費用に比して高額となるところ,本件において,保険会社側からは,同居する子が介護を担っていた経過から,将来介護費も近親者付添人による介護を前提として算定すべきとの主張がなされました。 しかし,確かに従前の経緯としては上記のとおりであったものの,被害者の子は自身の仕事や私生活を犠牲にして介護を担う状態にあり,将来的には自身の家庭をもつ希望も有していました。また配偶者についても,年齢的に将来の主体的な介護者となることが期待し難い状況であり,そのため,将来的には近親者のみでの介護継続は困難と考えられました。 こうした事情を指摘し,最終的に,配偶者が一定年齢に達する数年後までは近親者付添人による介護が前提とされつつも,それ以降の期間については週3日については職業付添人による介護がなされることを前提とした賠償額(約5500万円)が認められました。
重篤な後遺障害事案では,被害者本人の慰謝料はもちろん,近親者にも固有の慰謝料が認められることがあります。 本件では,同居する配偶者と子が固有の慰謝料請求を行い,将来にわたる介護負担等の事情も踏まえて各自300万円ずつの慰謝料が賠償される結果となりました。
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