眼球の障害には,視力障害、調節機能障害、運動障害及び視野障害があり,まぶたの障害には欠損障害,運動障害がある。また,外傷性散瞳についても後遺障害の等級の準用が認められています。
(眼球障害) 視力障害 原則として万国式試視力表により測定 眼球の器質的損傷 眼底検査等 視神経の損傷 ERG検査、VEP検査等 調節機能障害 アコモドポリレコーダーなど 運動機能障害 ヘススクリーンテストなど 視野障害 ゴールドマン型視野計
視力障害の後遺障害は大きく分けて,視力障害(1級〜13級),調節機能障害(11級〜12級),運動障害(10級〜13級),視野障害(9級・13級)の4類型に分類されます。また,まぶたの障害は,欠損障害(9級〜14級),運動障害(11級〜12級)の2類型に分類されます。上記類型以外にも,外傷性散瞳(11級から14級)などが後遺障害として認定されています。 自賠責保険では,下表のとおり,等級及び労働能力喪失率が規定されています。
(1) 視力 視力障害の測定は,原則として万国式試視力表によります。 障害等級表にいう視力とは,矯正視力をいう。ただし矯正が不能な場合には裸眼視力によることとなります。矯正視力による障害等級の認定は,以下のとおりです。 @角膜の不正乱視が認められず,かつ,眼鏡による完全矯正を行なっても不等像視を生じない者については,眼鏡により矯正した視力を測定して障害等級を認定します。 ※不等像視とは,左右両眼の屈折状態等が異なるため,左眼と右眼の網膜に映ずる像の大きさ,形が異なるものをいいます。 A上記@以外の者については,コンタクトレンズの装用が医学手金可能であり,かつ,コンタクトレンズによる矯正を行なうことにより良好な視界が得られる場合には,コンタクトレンズにより矯正した視力を測定して障害等級を認定することとなります。 B眼鏡による完全矯正を行なえば,不等像視を生ずる場合であって,コンタクトレンズの装用が不能な場合には,眼鏡矯正の程度を調整して不等像視出現を回避し得る視力により障害等級を認定することとなります。 Cコンタクトレンズの装用の可否及び視力の測定は,コンタクトレンズを医師の管理下で3ヶ月間試行的に装用し,その後に行なう。なお,コンタクトレンズの装用が可能と認められるのは,1日に8時間以上の連続装用が可能な場合とします。
(2) 失明について 「失明」とは,眼球を亡失(摘出)したもの,明暗を弁じ得ないもの及びようやく明暗を弁ずることができる程度のものをいい,光覚弁(明暗弁)又は手動弁が含まれます。 ※光覚弁…暗室にて被験者の眼前で照明を点滅させ,明暗が弁別できる視力をいいます。 ※手動弁…検者の手掌を被験者の眼前で上下左右に動かし,動きの方向を弁識できる能力をいいます。 ※指数弁…検者の指の数を答えさせ,それを正答できる最長距離により視力を表すもので,「1m/指数弁」等と表記します。
(3) 両眼の視力障害 両眼の視力障害については,障害等級表に掲げられている両眼の視力障害の該当する等級をもって認定することとし,1眼ごとの等級を定め,併合繰り上げの方法を用いて準用等級を定める取扱は行われないこととされています。ただし,両眼の該当する等級よりも,いずれか1眼の該当する等級が上位である場合は,その1眼のみに障害が存するものとみなして,等級を認定することとなります。
「調節力」とは,明視できる遠点から近点までの距離的な範囲(調節域)をレンズに換算した値であり,単位はジオプトリー(D)である。調節力は年齢と密接な関係があります。 調節力が1/2以下に減じているか否かは,被災した眼が1眼のみであって,被災していない眼の調節力に異常がない場合は,当該地眼の調節力との比較によります。 両眼が被災した場合及び被災した眼は1眼のみであるが被災していない眼の調整力に異常が認められる場合は,年齢別の調整力を示す下表の調整力値との比較により行ないます。下記表の「40歳」には,「40歳」から「44歳」までの者に対応するものとして取り扱います。なお,年齢は治癒時の年齢とします。
※ 複視を残す場合,併せて頭痛等の神経症状を残すことが多いが,これらは複視によって派生的に生じているものであり,症状としても複視とは別途に独立して評価する必要はない程度のものとされています。 また,複視の原因である眼筋の麻痺等は,「眼球の著しい運動障害」である注視野の減少の原因でもあり,「眼球の著しい運動障害」に該当する眼筋の麻痺等がある場合には,通常複視も残すこととなります。 ※ 複視には,上記の他に単眼性複視(水晶体亜脱臼,眼内レンズ偏位などによって生じる)もある。単眼性複視については,眼球の運動障害により生ずるものではないので,視力障害として評価されることになります。
まぶたの障害において,系列を異にする2以上の障害が存する場合は,併合して等級を認定することとなります。
会社経営・団体職員(男性・症状固定時50歳)の正面視以外の複視(13級2号)につき,固定後約1年半後のヘススクリーンテストでは後遺障害認定基準を満たさないが,現に複視症状がありパソコンの画面を30分以上集中して見ることができず業務の作業効率が大幅に低下し,視神経に過度の負担をかけるために重度の肩こりに悩まされていることを認め,9%17年間の労働能力喪失を認めた裁判例があります(さいたま地判H24.5.11) ※眼の障害の場合には,就労可能年齢である67歳までの労働能力喪失を認めるケースが比較的多い(旭川地判H11.1.26,大阪地判H13.3.23,東京地判H18.12.25)。
・赤本,障害認定必携