耳の障害については,両耳の聴力障害と耳介の欠損が定められています。また,障害等級表に掲げられていない耳の障害についても,その障害の程度に応じて相当の認定がなされることがあります。
(聴力障害) 聴力検査 純音聴力検査や語音聴力検査など 耳鳴の検査 ピッチ・マッチ検査、ラウドネス・バランス検査
耳の障害については,障害等級表において,次のとおり,両耳の聴力障害について6段階(9区分),1耳の聴力障害について4段階に区分して定め,また,耳介の欠損損害について1等級が認められています。
両 耳
一 耳
耳介の大部分を欠損したものについては,耳介の欠損障害としてとらえた場合の等級と外貌の醜状障害としてとらえた場合の等級のうち,いずれか上位の等級に人手にすることとなります。 耳介の軟骨部の1/2以上に達しない欠損であっても,これが「外貌の単なる醜状」の程度に該当する場合は,相当の等級が認定されることになります。
鼓膜の外傷性穿孔及びそれによる耳漏は,手術的処置により治癒を図り,そののちに聴力障害が残れば,その障害の程度に応じて等級を認定することとなるが,この場合,聴力障害が障害等級に該当しない程度のものであっても,常時耳漏があるものは12級相当,その他のものについては14級相当として等級認定されることになります。
耳鳴に係る検査によって難聴に伴い著しい耳鳴が常時あると評価できるものについては12級を,難聴に伴い常時耳鳴があることが合理的に説明できるものについては14級をそれぞれ準用します。 耳鳴が常時存在するものの,昼間外部の音によって耳鳴が遮へいされる為自覚症状がなく,夜間のみ耳鳴の自覚症状を有する場合には,耳鳴が常時あるものとして取り扱います。
内耳の損傷による平衡機能障害については,神経系統の機能の障害の一部として評価できるので,神経系統の機能の障害について定められている認定基準により等級が認定されます。 内耳の機能障害により,平衡機能障害のみでなく,聴力障害も現存する場合には,併合の方法により等級を定めます。
事務職員(男性・症状固定時36歳)の右耳小骨離断に伴う右難聴,耳鳴り(14級)につき,67歳まで5%の労働能力喪失を認めた裁判例があります(東京地判H25.1.16) また,自賠責保険より高い等級や喪失率が認定された事例として,@タクシー運転手(男性・症状固定時59歳)の外傷性頸部群症候群による左耳鳴り,難聴(14級相当)につき,8年間14%の労働能力喪失を認めた判例(岡山地判H5.4.23),Aタクシー運転手(男性・症状固定時42歳・自賠責の等級は14級10号)につき,左耳の難聴,左耳鳴り(自賠責では非該当扱い)につき,左耳の症状を10級5号に該当するとして,全体で併合10級,25年間で27%の労働能力喪失を認めた裁判例もあります(大阪地判H12.3.14)。
・ 労災補償 障害認定必携(財団法人労災サポートセンター,第15版)